埋めたくなる衝動

物を減らしていくと、空白ができる。

部屋の中に。

棚の中に。

そして、感覚の中にも。

何も無い状態になると、落ち着くはずなのに、

どこか手持ち無沙汰になる。

そして、ふと考える。

「何か足した方がいいんじゃないか」と。

特に必要ではない。

困っているわけでもない。

それでも、何かを探し始める。

ネットを開く。

おすすめを見る。

セールを眺める。

気付くと、「これ良さそうだな」と思っている。

この時、何をしているのか。

空いた場所を、埋めようとしている。

物を減らしたことで生まれた空白。

そのままでも問題はない。

それでも、人は埋めたくなる。

それは不安とも少し違う。

ただ、空いていることに慣れていない。

今までずっと、何かがあった場所。

何かで満たされていた状態。

それが普通だった。

だから、空いていると違和感になる。

その違和感を解消する一番簡単な方法が、

何かを足すこと。

でも、それを繰り返すと、

また同じ状態に戻る。

減らす。

空く。

埋める。

この繰り返し。

空所者は、ここで止まる。

埋めようとする衝動が出てきても、

そのままにしておく。

何も足さない。

すると、その衝動は少しずつ弱くなる。

最初は強い。

落ち着かない。

何かをしたくなる。

でも、時間が経つと気付く。

埋めなくても、特に問題は起きない。

空いている状態は、不完全ではなかった。

ただ、慣れていなかっただけ。

埋めたくなる衝動は、自然に出てくる。

それを否定する必要はない。

ただ、そのまま動かないという選択もある。

何も足さない状態。

そこに留まることができると、

空白の見え方は変わる。

埋める対象ではなく、

そのままで成立するものになる。

それが、空所者の見ている空白。

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