私は、最初から物欲の少ない人間だったわけではない。
むしろ、その逆だった。
欲しい物があれば探し回った。
限定品なら手に入れたくなった。
好きなものは集めた。
一度好きになったものには、惜しみなく時間もお金も使った。
そんな自分だったからこそ、長い年月をかけて物との関係を考えることになった。
そして、ようやく一つの答えに辿り着いた。
大切なのは、物を持たないことではない。
物に支配されないことだ。
私は、物を全て否定したいわけではない。
好きなものを手に入れる喜びは知っている。
憧れていたものを迎え入れた時の感動も知っている。
だからこそ、所有すること自体が悪いとは思わない。
問題なのは、いつの間にか物が自分の人生の中心になってしまうことだ。
欲しいから買う。
限定だから買う。
失うのが怖いから残す。
持っている数で好きな気持ちを証明する。
そうやって、物のために時間や自由を失っていく。
かつての私は、まさにその状態だった。
しかし、様々な経験を重ねる中で気付いた。
本当に大切なのは、所有する量ではない。
自分の人生に、どれだけ必要なものなのか。
今の自分に、本当に意味があるものなのか。
そこを見極めることだった。
私はこの考え方を「空所者」と呼ぶことにした。
空所者とは、何も持たない人間ではない。
空っぽになることを目指すものでもない。
必要以上の物や執着で、自分自身のための空間を失わない生き方である。
物理的な空間だけではない。
心の余白。
時間の余白。
人生の選択肢。
それらを取り戻すために、不要なものを手放していく。
だから空所者にとって、手放すことは失うことではない。
本当に大切なものを大切にするための選択なのだ。
かつて、私は欲しい物を全て手に入れようとしていた。
しかし今は違う。
全てを所有する必要はない。
本当に必要なものだけがあればいい。
それは物を軽視する考えではない。
むしろ、一つ一つの物と丁寧に向き合うための考え方である。
物欲に支配された人生を経験したからこそ、見えた答え。
それが、私にとっての「空所者」という生き方である。
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