第8話 「持たない」という価値観との出会い

長い間、私は答えを探し続けていた。

どうすれば物に苦しめられないのか。

どうすれば本当に大切なものだけを残せるのか。

掃除。

整理。

断捨離。

様々な考え方に触れてきた。

その中で、私は少しずつ理解していった。

問題は、物をどう片付けるかではない。

そもそも、なぜそれほど多くの物を持とうとするのか。

そこを考えなければ、根本的な解決にはならない。

そんな時、私は一つの作品と出会った。

「持たない」という生き方を題材にした作品だった。

それは、私にとって非常に大きな衝撃だった。

なぜなら、それまで私は「どう捨てるか」を考えていたからだ。

しかし、そこにあったのは、

「どう減らすか」

ではなく、

「なぜ持つ必要があるのか」

という視点だった。

私はそれまで、欲しい物を手に入れることに大きな価値を感じていた。

限定品。

特典。

希少性。

所有する喜び。

それらを追い求めてきた。

しかし、別の視点から見ると、所有とは常に管理する責任も伴う。

置く場所が必要になる。

掃除の手間が増える。

状態を気にする。

失う不安を抱える。

手に入れた瞬間は喜びでも、時間が経てば負担になることもある。

その事実に、改めて気付かされた。

もちろん、物を持つこと自体が悪いわけではない。

好きなものを持つ喜びは確かに存在する。

私自身、それを誰よりも経験してきた。

だからこそ分かる。

問題なのは、物を持つことではない。

物によって、自分の時間や自由が奪われることなのだ。

この時、私の中で長年探し続けていた考えが少しずつ形になり始めた。

大切なのは、何も持たないことではない。

本当に必要なものだけを選ぶこと。

好きなものだからこそ、数ではなく意味を見ること。

所有することよりも、自由であることを大切にすること。

「持たない」という考え方は、私にとって単なる片付けの方法ではなかった。

それは、生き方そのものを見直すきっかけだった。

そして、この時から私は少しずつ、自分自身の価値観を言葉にできるようになっていった。

後に「空所者」と呼ぶことになる考え方は、ここから始まったのである。

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